143.4
令和8年5月の肥料小売価格指数。令和2年平均を100とした値です。
円安、国際市況、海上運賃。農業資材の価格は、畑の外側にある要因で大きく揺れます。本記事では、輸入コスト上昇のなかでも施肥設計に直結しやすい尿素・りん安・塩化加里などの肥料原料に焦点を当てます。備え方は、輸入肥料を急に減らすことではありません。地域にある堆肥、作物残さ、米ぬか、もみ殻、緑肥などを土づくり資源として活かし、購入資材への依存度を少しずつ下げていくことです。

円安や輸入コスト上昇への対策は、輸入肥料を急に減らすことではありません。まずは土壌診断で、すでに土にある成分と不足している成分を分けて見ることです。
国産有機資材は、輸入肥料をそのまま置き換える安い代替品ではありません。地域にある堆肥、作物残さ、米ぬか、もみ殻、緑肥を土づくり資源として活かし、購入肥料が効きやすい土に近づけるための選択肢です。
自立した農業とは、何も買わない農業ではなく、外から買うもの・地域でまかなえるもの・土の中で活かすものを判断できる経営に近づけることです。
今回の主役は、尿素・りん安・塩化加里などの肥料原料です。国際市況、通関価格、為替、物流の影響を受けやすく、農家の施肥設計と経営コストに直結します。
農林水産省の「肥料の価格情報」(2026年7月確認時点)では、令和8年5月の通関価格は、尿素141.4千円/t、りん安149.2千円/t、塩化加里75.5千円/t。肥料の小売価格指数も、令和2年平均を100とした場合、令和8年5月で143.4です。
143.4
令和8年5月の肥料小売価格指数。令和2年平均を100とした値です。
141.4千円/t
令和8年5月の通関価格。窒素肥料原料の輸入コストを見る指標です。
149.2千円/t
令和8年5月の通関価格。リン酸と窒素に関わる主要原料です。
75.5千円/t
令和8年5月の通関価格。作物残さや堆肥由来の戻りも確認したい成分です。
| 輸入コストが効くもの | 影響を受ける理由 | 農家が先に見ること | やってはいけないこと |
|---|---|---|---|
| 尿素・窒素肥料 | 国際市況、通関価格、為替の影響を受ける | 窒素投入量、根張り、肥料の効き方を確認する | 土壌診断なしに急な減肥をしない |
| りん安・リン酸肥料 | 輸入原料価格と施肥設計の影響が大きい | 土壌中のリン酸蓄積、不足、作物要求量を見る | 過剰・不足を見ずに慣行量を続けない |
| 塩化加里・カリ肥料 | カリ原料の国際市況と輸入価格に左右される | 堆肥、作物残さ、稲わら由来のカリの戻りを見る | 戻り分を無視して入れすぎない |
| 燃料・運搬費 | 原油価格、物流費、為替の影響を受ける | 近場の資材、散布回数、保管場所、運搬距離を見る | 資材単価だけで経済性を判断しない |
国産有機資材といっても、性質は一つではありません。肥料成分を多く含むもの、土壌物理性の改善に向くもの、分解に時間がかかるもの、安全性や施用量の確認が必要なものがあります。
経済性は、資材単価だけでは判断できません。成分量、運搬費、散布労力、保管性、分解期間、安全性、土壌改善効果、調達安定性まで含めて見る必要があります。
| 国産有機資材 | 期待できる役割 | 確認したい注意点 | 向きやすい使い方 |
|---|---|---|---|
| 家畜ふん堆肥・鶏ふん | 有機物補給、リン酸・カリ・石灰などの成分補給 | 成分差、塩類、完熟度、臭気、クロピラリド | 土壌診断と資材成分を見て、施肥設計に組み込む |
| 米ぬか・食品残さ由来資材 | 分解されやすい有機物、微生物のエサ | 虫、臭気、未熟分解、窒素飢餓、安全性 | 少量から試し、分解期間と水分を確保する |
| もみ殻・稲わら・作物残さ | 圃場内資源の循環、通気性・物理性改善 | 分解の遅さ、すき込み時期、病害、窒素とのバランス | 収穫後から次作までの期間を使って分解させる |
| 緑肥 | 根による土づくり、有機物供給、被覆 | 作付け期間、すき込み時期、次作との相性 | 輪作や休閑期間に組み込み、土壌物理性を整える |
| 下水汚泥資源由来肥料 | リンなど国内肥料資源としての活用 | 法規、安全性、重金属、利用条件、地域差 | 制度・品質・地域の利用条件を確認して検討する |
鶏ふんは肥料成分の供給に寄りやすく、家畜ふん堆肥は有機物補給や物理性改善の役割も見ます。もみ殻や稲わらは、通気性や土の扱いやすさに効きやすい一方、分解には時間がかかります。名前で選ぶのではなく、成分・完熟度・分解スピード・運搬しやすさで選ぶことが、失敗を減らす近道です。
pH、EC、リン酸、カリ、腐植、土の硬さを見て、足りない成分と蓄積している成分を分けます。
単価だけでなく、運搬費、散布労力、保管場所、分解期間、収量・品質への影響まで見ます。
国産なら何でも安心ではありません。原料、完熟度、塩類、クロピラリド、利用条件を確認します。
有機資材は、畑に入れただけでは十分に働くとは限りません。分解され、根が張りやすい土壌環境につながって初めて、土づくり資源になります。
分解が遅れると、窒素飢餓、ガス障害、根傷み、病害リスクにつながる場合があります。だからこそ、作物残さや有機物をどう分解させるかが重要です。
地域にある有機資材を確認する
成分・安全性・分解期間を見る
水分・温度・すき込み時期を整える
土壌微生物の働きで根域環境へつなげる
カルスNC-Rは、肥料原料の輸入コストを直接下げる資材ではありません。作物残さや有機物を土づくりに活かし、購入肥料が効きやすい根域環境づくりを支える選択肢の一つです。

リサール酵産株式会社 代表取締役社長。微生物資材を活用した土づくりの普及に取り組む。
A:円安や国際市況は、農家が直接コントロールできません。尿素、りん安、塩化加里のような肥料原料は、海外の価格や為替の影響を受けます。だからこそ、外から買っているものを見える化することが大事です。
ただ、輸入肥料を急にやめるという話ではありません。まずは土壌診断をして、何が足りていて、何が不足しているのかを確認する。そのうえで、地域にある有機物を土づくりに使えるか考える順番です。
A:まず確認するのは、「何が原料で、どの成分がどれだけ含まれているか」です。
鶏ふん、豚ぷん、牛ふん、食品由来など、原料によって窒素の効き方や分解速度、塩類濃度は大きく異なります。国産という理由だけで判断せず、保証成分、C/N比、EC、pH、熟度、施用量を確認することが大切です。
そのうえで土壌診断の結果と照らし合わせ、圃場に本当に必要な資材かを判断します。リン酸や加里がすでに蓄積している土へ、同じ成分を多く含む資材を入れれば、コストをかけて過剰施肥を進めることになります。資材を選ぶ前に、原料・成分・土の状態を見ることが基本です。
A:堆肥は土づくりの基本になりますが、成分や完熟度を見ます。米ぬかは分解しやすい有機物ですが、入れ方を間違えると虫や臭気、窒素飢餓の問題が出ることがあります。もみ殻は通気性の改善に使いやすい一方で、分解は遅いです。
作物残さは、畑の中にある大事な資源です。ただし、そのまま残せばよいわけではありません。病害や分解期間を見ながら、次作に間に合うように処理していく必要があります。
A:安定した良品多収を目指すうえでは、pHや肥料成分だけでなく、腐植とCECを重視します。
一つの目標は、腐植5%以上、CEC30me/100g以上です。CECは土が養分を保持する力を示し、数値が低いと、施した肥料が流れやすく、作物へ安定して供給されにくくなります。
腐植が不足した土では、化学性の数値だけを整えても、保水性や排水性などの物理性、微生物が働く生物性まで十分に改善されません。土壌診断では肥料成分の過不足を見るだけでなく、土が肥料を蓄え、根と微生物を支えられる状態かまで確認することが大切です。
A:代わりにはなりません。カルスNC-Rは肥料原料ではなく、作物残さや有機物の分解を進める微生物資材です。窒素、リン酸、カリを必要量そのまま供給するものではありません。
ただ、有機物の分解を進めて土づくりにつなげることで、根が張りやすい土壌環境づくりを支えることはできます。国産有機資材を使う時には、分解をどう進めるかが大事です。
A:まずは小面積の比較区を設け、複数作で確認することをおすすめします。
土質や排水性、これまでの施肥履歴が比較的そろっている圃場を選び、従来の施肥区と見直し区を並べて比較します。
1作だけでは天候や作物の影響も大きいため、すぐに結論を出さず、土の扱いやすさ、根張り、収量、品質、肥料コストなどを記録します。購入肥料を減らせたかだけでなく、良品多収を維持しながら、土の状態が改善しているかを見ることが大切です。
輸入コスト対策は、いきなり全面切り替えではありません。依存している資材を見える化し、土壌診断をもとに、小さく試して記録します。
肥料、燃料、飼料、農薬原料、包装資材など、外部環境の影響を受けやすい費目を整理します。
感覚ではなく、土の状態を数字で見ます。足りない成分と、すでに蓄積している成分を分けます。
堆肥、作物残さ、稲わら、米ぬか、もみ殻、緑肥を、廃棄物ではなく土づくり資源として見直します。
資材単価だけで判断せず、総コストで比べます。必要なら成分分析や安全性も確認します。
いきなり全面で切り替えず、比較区を作ります。収量、品質、根張り、分解状態、土の扱いやすさを記録します。
| 棚卸し項目 | 確認すること | 判断の目安 | 記録したい指標 |
|---|---|---|---|
| 今の購入肥料 | 10aあたりの窒素・リン酸・カリ投入量、資材単価、散布回数 | 土壌診断で不足分と蓄積分を分ける | 施肥量、肥料費、収量、品質 |
| 地域の有機資材 | 堆肥、鶏ふん、米ぬか、もみ殻、稲わら、緑肥の入手性 | 成分・完熟度・安全性・運搬距離を確認する | 投入量、運搬費、散布時間、臭気・虫の発生 |
| 試す圃場 | 比較区を作れるか、次作まで分解期間を取れるか | まずは経営リスクの小さい小面積で試す | 根張り、土の硬さ、水はけ、分解状態 |
| 継続判断 | 1作だけの収量差で決めず、土の変化も見る | 減肥額だけでなく、作業性・品質・安定性まで見る | 作業時間、秀品率、病害、次作の立ち上がり |
円安や肥料高騰が続くと、どうしても「減らす」「安いものに替える」に意識が向きます。けれど、土壌診断や成分確認を飛ばすと、収量・品質の低下につながることがあります。
不足成分を見ずに減らすと、収量や品質に影響します。土壌診断と施肥設計を先に行います。
pH、EC、塩類、完熟度、分解期間を見ずに入れると、根傷みや窒素飢餓の原因になります。
運搬費、散布労力、保管性、安全性、作物への影響を含めて見なければ、総コストは下がりません。
円安や輸入コストの上昇は、農家が直接コントロールできません。尿素、りん安、塩化加里のような肥料原料は、国際市況や通関価格、為替の影響を受けます。
だからこそ、まずは外から買っているものを把握する。土壌診断をもとに施肥を組み直す。地域にある堆肥、作物残さ、米ぬか、もみ殻、緑肥を、土壌微生物の働きで土づくり資源に変える。
国産有機資材は、輸入肥料の安い代替品ではありません。為替に振り回されにくい調達基盤を作り、施肥効率が落ちにくい土を育てるための選択肢です。その積み重ねが、円安・輸入コスト上昇に振り回されにくい農業経営につながります。
微生物の働きが強く分解スピードが速いためすぐに次の栽培準備に取りかかれる
枯れた作物や根などを分解して、肥料成分として再利用できる
嫌気的条件でも活動できる微生物を含んでおり有害ガスの発生を抑えながら土壌を健全に保てる