土づくりに関するコラム
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土づくりは、肥料や資材を入れるだけで完結するものではありません。気候の変化、肥料価格の高騰など、農業経営を取り巻くニュースの多くは、土の状態と深くつながっています。
このコラムでは、土づくりの専門家であるリサール酵産株式会社の飯川隼斗社長に、今知っておきたい農業ニュースの読み解き方や、現場で生まれやすい疑問についてわかりやすく解説していただきます。日々の栽培判断や、これからの土壌改良を考えるきっかけとしてお役立てください。
中東情勢に振り回されない土づくりへ
中東情勢やホルムズ海峡のニュースは、畑から遠い話に見えて、実は肥料代や輸送費にじわじわ響いてきます。特に日本は主要な肥料原料の多くを輸入に頼っているため、天然ガス価格や海上輸送の乱れを完全には避けられません。価格が読みにくい時代に考えたいのは、外から買う肥料をただ削ることではなく、圃場内の作物残さや有機物を活かし、肥料が効きやすい土へ変えていくこと。毎年の市況に一喜一憂しないためにも、まず畑の中にある資源をどう回すかを見直したいところです。ここでは、外部環境に振り回されにくい「土づくり自給」の考え方を紹介します。
猛暑・長雨に負けない根の土台をつくる
猛暑で水を吸えない、長雨で酸素が足りない。異常気象の影響は、最後には根の働きに表れます。水をやっているのにしおれる、雨の後に急に弱る、肥料を入れても効きが鈍い。そんな症状の裏には、根が伸びにくい土、排水や通気が不安定な土が隠れているかもしれません。水を逃がし、水を抱え、空気を残す土に近づけるには、団粒構造や有機物の分解の視点が欠かせません。毎年の天候リスクを前提にした備えが必要です。被害が出てからの対処だけでは間に合わない場面も増えています。天候のせいだけで終わらせず、根が動ける土を事前につくるための考え方を紹介します。
肥料高騰時代に見直したい窒素との向き合い方
窒素肥料の価格は、肥料そのものの需給だけでなく、天然ガスやアンモニア、国際物流、為替の影響も受けます。価格が上がったときに怖いのは、土壌診断なしで肥料を減らし、収量や品質まで落としてしまうことです。一方で、同じ量を入れていても、根が張れない土では肥料を十分に使い切れません。作物残さや堆肥をどう分解し、根が吸いやすい環境をどう整えるか。肥料高騰を単なる我慢比べにしないためにも、土の中の効率を見ることが大切です。購入肥料をゼロにするのではなく、入れた肥料を作物に効かせる土へ変えていく視点を整理します。
未利用資源を“使える肥料”に変えるには
食品残さ、もみ殻、稲わら、畜ふんなど、地域には農業に活かせる有機資源が多くあります。ただし、未利用資源はそのまま畑に入れればよいわけではありません。水分が多すぎる、塩分や油分が残る、腐熟が進んでいない、成分が見えない。こうした状態では、資源どころか生育不良の原因になることもあります。成分、安全性、水分、腐熟、使いやすさまで整えて初めて、農家が安心して使える肥料資源になります。地域循環を掛け声で終わらせないために、何を確認し、どう品質を整えるべきか。廃棄物を土づくり資源へ変える考え方を解説します。
土壌改良を後回しにする前に知っておきたいこと
肥料代や燃料費が読みにくい時期ほど、目先の支出を削りたくなります。ただ、土壌改良まで後回しにすると、根張りや排水性、肥料効率が少しずつ落ち、数作後の収量や品質のブレとして返ってくることがあります。土は農機や施設のように、壊れた瞬間が分かりやすいものではありません。だからこそ、悪くなる前の手入れが大切です。市況が苦しいときほど、単なる節約と将来の生産力を守る投資は分けて考えたいところです。肥料を減らす前に、まず肥料が効く土になっているかを見る。削ってよいコストと守るべき投資を分け、土を圃場資産として見る判断軸を紹介します。
資材高騰に振り回されにくい“地力”経営へ
ナフサや樹脂、物流の不安定さは、マルチフィルムやハウス被覆材、防草シートなどの価格と納期に影響します。ただし、資材費が上がったからといって、収量や品質を守るために必要な資材まで急に減らすのは危険です。購入費だけでなく、張り替えや廃棄、除草、灌水、収量への影響まで含めた総コストで判断する必要があります。そのうえで、保水性や排水性、根張り、有機物の分解を整え、資材の役割を土の力で補える部分から見直していく。資材をなくすのではなく、資材に頼りきらなくても安定しやすい圃場をつくるための考え方を紹介します。
人手不足を「やり直しの少ない畑」で補う
農業人口が減少するなか、省力化は機械の導入だけでは完結しません。土が硬い、根が浅い、水分が安定しない、作物残さが分解されない状態では、耕うんや潅水、追肥、残さ処理などの修正作業が毎作のように発生します。目指したいのは、何もしなくてよい畑ではなく、少ない作業でも生育が安定し、やり直しを減らせる畑です。土壌診断をもとに、排水性や保水性、根張り、有機物の分解を整えることは、限られた人手を重要な作業へ振り向けることにもつながります。人手不足を前提に、畑そのものを扱いやすくする省力化の進め方を解説します。
食料安全保障を圃場の安定生産から考える
食料安全保障というと国の政策に聞こえますが、農家にとっては、資材高や天候不順があっても作付けと出荷を続けられるかという経営課題です。単年の最高収量だけを追うのではなく、収量のブレを抑え、肥料を効かせ、地域の有機物を循環させることが、国内で作り続ける力につながります。その土台になるのが、根が張り、水分が安定し、有機物が分解される土です。土壌診断や施肥設計、残さ分解を一体で見直し、圃場の下振れリスクを減らすことから国内農業の強化を考えます。
施設で守る機能と土で支える機能を分ける
塗料やコーティング剤、コーキング材などの価格や調達が不安定になると、施設農業の維持管理コストは重くなります。ただし、構造安全や防水、遮熱、雨漏り対策といった施設の機能を、土づくりで代替することはできません。一方で、根張りや保水性、排水性、有機物の分解、pH・EC管理は、圃場の中で改善できる領域です。補修費だけを見て一律に支出を削るのではなく、施設側で守るべき機能と土で支えられる機能を切り分ける。病害や作業時間、収量、品質まで含め、維持管理を総コストで考えるための判断軸を紹介します。
輸入資材に頼りすぎない調達と土づくりへ
円安や国際物流の変化は、尿素やりん安、塩化加里など、輸入に依存する肥料原料の調達コストを押し上げます。だからといって、成分や土の状態を確認せずに輸入肥料を国産有機資材へ置き換えるだけでは、安定した栽培にはつながりません。まず土壌診断を行い、必要な養分を把握したうえで、地域の堆肥や作物残さ、米ぬか、もみ殻、緑肥をどう分解し、土づくりに活かすかを考えることが大切です。全部を自給するのではなく、外から買うものを選び、地域資源を使える状態に変える。為替に振り回されにくい調達基盤と土を育てる方法を解説します。

