次の世代に残す土は、痩せた土じゃない
飯川さんが繰り返し口にするのが「土づくりは、未来づくり」という言葉です。化成肥料や農薬に頼って痩せてしまった土ではなく、微生物が豊かに生きている土壌を次の世代へ渡したい。この思いが、飯川さんの経営判断の根っこにあります。
稲わらや籾殻、野菜くず。普通なら燃やされたり捨てられたりするものです。でも、微生物の力で分解すれば土に還って養分になる。飯川さんはこれを「捨てればゴミ、活かせば資源」と表現しています。家庭菜園をやっている方なら、使い終わったプランターの土や収穫後の残さをどうするか、一度は悩んだことがあるはず。その悩みに対する飯川さんの答えが「燃やさず、捨てず、微生物に任せる」です。
金曜夜でも土日でも、土の悩みにはすぐ答える
家庭菜園やガーデニングを楽しんでいる人は、平日は仕事をしていて週末に庭へ出ることが多い。だから「土がおかしい」「使い方がわからない」という問い合わせは金曜の夜や土日に集中します。飯川さんはそのタイミングを知っているからこそ、SNSのコメントやLINEの問い合わせにできるだけ早く返すことを自分のルールにしています。
YouTubeやInstagramでも顔を出して発信しているのは、「商品ではなく、まず人として信頼してもらいたい」から。誰が作っていて、どんな思いで届けているのか。その背景まで伝わったとき、はじめて商品の使い方や効果もちゃんと届くと飯川さんはそう考えています。土のことで困ったとき、気軽に聞ける相手がメーカーの社長本人というのは、ユーザーにとってかなり心強いのではないでしょうか。
「県1位で満足するか、全国を目指すか」で毎日が変わる
飯川さんはメディアのインタビューで「目標を追うより、\"基準値をどこに置くか\"を意識している」と語っています。学生時代にソフトテニスで県優勝・関東大会5位まで行った経験が、ここに生きているのかもしれません。県大会で1位を目指すのか、全国で1位を目指すのかで、毎日の練習の質は変わる。ビジネスでも同じだ、と。
実際に飯川さんは、入社後まもなく外部の大株主から株式を買い戻し、経営のオーナーシップを自分で取りに行っています。コロナ禍で対面営業が止まったときはYouTubeに舵を切り、園芸YouTuberとの協業で新商品も生み出しました。安定した金融機関を辞めて、経営が厳しかった家業に飛び込んだのも、この「基準値を上げる」考え方と地続きです。
リスクを取れば批判もトラブルもある。でも「うまくいかなければ、それは自分の実力が足りなかっただけ」と飯川さんは言い切ります。創業50年目を迎える老舗メーカーの三代目が、守りではなく攻めを選び続けている理由は、このあたりにありそうです。